「モロトフのパンかご」ことRRAB(回転拡散航空爆弾)について

クラスター爆弾禁止条約に関する本では、クラスター爆弾の歴史の項目に「第二次世界大戦の頃に初めて使用された」と書いてあることがあるが、詳細は述べられていない。これがずっと気になっていたので、今回はその一例として、初期のクラスター爆弾であるソ連が使用したRRAB、通称「モロトフのパンかご」についてネット上を簡単に検索して概要をまとめる。

 RRABについては以下のページが詳しい。今回はとりあえずここを中心に情報を拾った。いくつか食い違う情報もあるが細かいことは気にしない。
http://www.rkka.es/Armamento/004_bombas/002_RRAB/000_RRAB.htm
http://topwar.ru/14371-sovetskaya-aviabomba-s-deystviem-kassetnogo-tipa-rrab.html


  • 概要

ロシア語ではРРАБ (Ротативно-рассеивающая авиационная бомба:回転拡散航空爆弾)といい、その言葉通り、航空機から投下され、回転することで子弾を拡散する。大きさと搭載可能な子弾の数が異なるRRAB-1, RRAB-2, RRAB-3の3つの種類があり、それぞれ搭載量[kg]からRRAB-1000, RRAB-500, RRAB-250とも呼ばれる。基本的な構成は同じで、空気抵抗を減らす形状の前部があり、中央に弾倉、後部には投下後に本体を回転させるための折りたたみ式のフィンがついている。子弾は2.5〜 32kgの破片爆弾や焼夷弾を搭載し、子弾の種類によって搭載数と子弾の散布範囲が異なる。


  • 動作

 本体後部のフィンは運搬時に折りたたまれた状態で固定されているが、投下時に解放され、落下するにつれて本体が回転を始める。投下後5〜10秒で遠心力により本体の爆弾倉の側面板を固定していた金属リングのワイヤー部分が破断し、子弾が空中に拡散される。このときの拡散範囲は投下高度と子弾によるが、以下の数字が示されている。

    • 高度3000mからの投下

RRAB-1: 225〜940m2
RRAB-2: 255〜1,300m2
RRAB-3: 220〜850m2

    • 高度5000mからの投下

RRAB-1: 255〜1,200m2
RRAB-2: 315〜1,700m2
RRAB-3: 480〜1,100m2

 参考までに現代のクラスター爆弾の拡散範囲を探すと、米軍のCBU-87で100m×50m, ロシア軍のRBK-250で4800m2という数字が見つかる。同重量の通常の爆弾の危害半径はhttp://www.warbirds.jp/heiki/bakudan.htmに戦中の日本で作成された資料が紹介されていて、参考になる。


  • 子弾について

 最初に挙げたページに各RRABに搭載可能な子弾とその数の表が示されている。爆弾の名称は先頭のアルファベットが爆弾の種類を、アルファベットの後の数字は爆弾の重量[kg]を表している。AOは破片爆弾、ZABは焼夷弾、PTABは成型炸薬弾で、一般的でないAJ, AF, JAB, AOJについてははっきりわからなかったが、おそらくAJは焼夷弾、AFは榴弾だろう。JAB, AOJはわからない。


  • 運用について

 ごく少数がノモンハンで初めて使用され、その後は冬戦争と独ソ戦で用いられた。対人、対非装甲車両に使用され、また焼夷弾を搭載したものは木造家屋に使用されたとある。特に対空陣地の攻撃に効果的であったという証言があり、またPe-8のパイロット、ドミトリー・ヴァウリンへのインタビュー(http://www.geocities.co.jp/SilkRoad/5870/beseda70.0.htmlで和訳されている。)では飛行場攻撃に用いたという証言がある。
 効果的な攻撃方法であった一方、搭載に手間がかかる、搭載した航空機の機動が制限される、適切に搭載しなければ投下時に予定より低い高度で開いてしまい子弾が拡散しない場合がある、などの面倒な一面もあったようだ。
 RRAB-1とRRAB-2は TB-3, TB-3RN, DB-3, IL-4に、RRAB-3はSB (MN) とIL-4に搭載可能とされている。ただ、R-5やPe-8、SB-2M103(http://mig3.sovietwarplanes.com/sb/sb-evolution/sb-evolution.htm)に搭載されている写真もある。